キミは当て馬、わたしはモブ。
幼なじみには敵わない
――慈愛の心って大事だと思うんだ。
「ねぇお兄ちゃん」
「ん? なんだ?」
ガチャガチャとコントローラーを操作する音が響いている。
日曜日、お兄ちゃんとスマブラをしながら考えた。
「わたし、気になる男子がいるんだけど……」
「おっ、なんて作品の幼なじみキャラ?」
「現実の話をお兄ちゃんにしようとしたのは間違いでした。さよなら」
「すまん和花ー!」
コントローラーを置いてお兄ちゃんの部屋から出ていこうとしたら、服の袖を引っ張られた。
「やめて伸びるっ!」
「大変すまんでした!」
「すみませんはすまんじゃ済まないから」
「んっ、なんて? 早口言葉?」
「そんなわけあるか!」
人が真剣に相談しようとしてるのに!
………。
スマブラ中にする話だし、別にそんな真剣でもないけど。
おいおいと泣き真似をして必死に引き留めてくるお兄ちゃんに、しょうがなく元の位置に戻ってあげた。
「で、どんなやつなんだ? その好きな男子。場合によっては抹殺……」
「好きじゃない。気になるっていってるの。人間として興味があるって意味。修学旅行のノリで買った木刀持ってこないで」
「え~でも今までみのるくんのことしか見てなかった和花が三次元の男に興味出るって……正直好きっしょ?」
「だからそういうのじゃないの!」
もう! 話が全然進まないよ!