キミは当て馬、わたしはモブ。
言うまで帰してもらえなさそうだ。
仕方なく、わたしは本音で話してあげる。
「……いない、けど」
「嘘ですね」
「はぁ!?」
怒りが表に出てしまって、咄嗟に口を塞いだ。もう遅いとは思うけど。
いや、うん。遅いならもういいか。もう恐れるものなんてなにもない。
「い、いきなりなに? 急に恋バナ吹っ掛けられた上に、正直に答えたら否定されて……気分悪いよ」
「キミはずっと見ていたじゃないですか」
「な、何を……」
わたしの言ってることに返事してよ。
帝塚くんは初めからまともな会話をする気なんてなかったんだ。
「見ていたでしょう、中村のことを」
「えっ……」
「それで、俺と同類なのだと確信を持ったのですが……違いましたか?」
「えぇ……?」
つまり?
「帝塚くんは、中村くんが好き………?」
「そっちじゃない」
一際低音が降り注いできたので、ムッと眉を寄せる。
帝塚くんの説明が悪いくせになんでわたしが怒られなきゃならないの。
そっちじゃないって……あぁ、じゃあこっち?
「あー、辻さんが好きなんだね」
「そうです」
「でもわたしは中村くんのこと好きじゃないよ」
「嘘ですね」
なんなのこの人イライラする。
当初感じていた恐怖なんてすっ飛ばして、怒りが勝っていくのがわかる。