キミは当て馬、わたしはモブ。



「……アカネちゃん」



 しぶしぶ呼ぶことにした。アカネちゃんは嬉しそうにニコニコ笑ってくれる。


 これじゃあ……友達、みたいになっちゃうなぁ。



「じゃーあたしも、和花ちゃんって呼ぶね!」



 あ……。


 帝塚くんが、すっごく羨ましそうな顔をしてる……。



「アカネさん、俺も」



 あっ、我慢できなくて横入りしてきた。



「え?」


「俺も名前で呼んでほしいです」



 照れもなくよく言うよね。


 アカネちゃんは「あー、えーと」なんて場を繋ぎながら、視線をキョロキョロとさ迷わせている。


 そして、最後にまっすぐと帝塚くんを見た。



「えっとそれは……ちょっと、違う、かも……」


「えっ……ちが、え? な、なんですか。え?」



 なんと帝塚くんは当たって砕けてしまった。


 珍しくどもりまくっている。そして、「佐久良はできたのに、なぜ?」という目線をわたしに送ってくる。


 わたしが知ったことじゃないでしょ。本人に聞いてよ。



「ごめんね? なんていうかあたし、帝塚くんと友達感覚っていうか……仲良し感覚? には、なれないかなって」



 す、すごい。ここまではっきりフラれることってあるんだ。


 脈なしっていうより、嫌われてるまであるよ。

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