キミは当て馬、わたしはモブ。


 待って。


 待って待って。


 状況が理解できない。



「ごめん、佐久良さん。嫌だとは思うんだけど、今だけ辛抱してほしい」



 中村くんがまっすぐわたしを見ている。


 嫌って、なんのことでしょうか。わたしは今から何をされるのでしょうか。


 できることなら助けてほしい。


 だって……今からあなたに告白しますって言われて冷静になれるようなメンタル持ってないよ……?



「佐久良さん、僕、佐久良さんのこと」



 しかもここ水族館の中だから!


 告白って、断る方にも負担あるからね!?


 やだやだ、やめて!



「す――」


「ダメ!」



 わたしのセリフだった。


 いや、わたしのセリフではないんだけど。


 わたしの気持ちを代弁してくれた、アカネちゃんのセリフだった。



「も、もしかしたら和花ちゃん、オッケーしちゃうかもしれないから、ダメ」


「いや、しないよ……」



 必死に止めてくれたアカネちゃんには悪いけど、気の抜けた声を出してしまう。



「……わかんないじゃん」


「わかるよ……?」


「わかんないよ。どんなきっかけで意識しちゃうか、わかんないもんなんだよ」



 ん? それは、誰の話をしてるのかな……?


 大勝利。


 その三文字がわたしの頭を支配していた最中、帝塚くんは……。


 ――――満足そうに、笑っていた……?

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