キミは当て馬、わたしはモブ。


 え……わたし的には、アリなんですけど……。


 むしろ無自覚の独占欲としか解釈できない。


 本人同士の気持ちがどうであれ、それを受け入れてしまっている時点でカップリング成立だよ。


 推しカプ万歳。


 今日は来てよかった。


 ……嬉しいのに、どこか引っかかるんだよ、帝塚くん。



「なるほど……」



 さっきまで空気と一体化していた帝塚くんが動き出す。


 わたしの隣に、ぴったりと張り付いて。それから、深く頷く。



「どうやら潮時みたいですね……」



 わたしにだけ聞こえるように呟いた。


 帝塚くんは、決して悲しそうにはしていない。


 やっぱりさっきの満足そうな表情は見間違いじゃない……?


 潮時、って……。


 なんだか嫌な予感がする。


 胸の奥がざわざわとして、後ろから徐々に焦りが近付いてくる。


 え? なんで。推しカプは、無事に守れたのに。


 帝塚くんの気持ちより、推しカプの方がずっと大事なはずなのに。


 なんでわたし、こんなに帝塚くんのことを心配しなきゃいけないの……?



「佐久良」



 帝塚くんは笑顔を向けてくる。


 きっと、たくさんの女の子を落とすことができる最高の笑顔。


 だからなんで、それをわたしに向けるかな……。

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