キミは当て馬、わたしはモブ。


 大きく息を吸った。



「わたしが好きなのは……!」



『――――幸せになってね。』


 彼の、満面の笑みが頭をよぎる。


 本当は辛かったはずなのに、そんな気持ちをなかったことにして。自分の気持ちを押し殺した笑顔を張り付けて。


 わたしはそれを見たときから、ずっと……。



「――中村くんとアカネちゃんのカップリングなの!」



 ――二人に幸せになってほしいって思ってる。



 わたしはキッ! と帝塚くんを睨むと、彼を押し退ける勢いで前へ進む。


 横を通りすぎるときに偶然肩がぶつかって帝塚くんがよろけた。


 まぁ、偶然だし。わたしも肩ぶつけて痛いからおあいこだよね。


 わたしは無言で通りすぎて、最後にふんっと鼻で笑ってやる。



「かっぷりんぐ……?」



 ピンときていないであろう帝塚くんのまぬけな声に、少しすっきりした。


 
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