キミは当て馬、わたしはモブ。


 アカネちゃんと中村くんが並んで帰っていく。


 わたしはなんとなく、その後ろ姿を見る帝塚くんのことがほっとけなくて、帰るに帰れずにいる。


 帝塚くんは動こうとしない。



「ねぇ……潮時って、なに」



 本当はわかってる。その言葉の意味。


 でも認められなかった。


 だって。だって帝塚くんは。



「アカネさんのことを諦めるなら今だと思いまして」



 やっぱり。



「彼女が俺のことを好きになることはないでしょう」



 なんでやめちゃうの?


 なんでそんなあっさり終わらせられるの?


 意味わかんない。


 わかんないよ……。



「ふ……どうして、キミがそんなに悲しそうにするんですか」



 帝塚くんの絵画みたいな笑顔に、胸がぎゅうと締め付けられる。


 わたし……わたし、は……。


 憧れ、てた。


 帝塚くんが、必死になってるのが眩しかった。


 わたしは、無駄でも本気だった恋を黒歴史にして、逃げたんだ。無駄なことに本気になるのはダサいって、そう思ったんだ。


 だから……キミのその諦めない姿勢が、すっごく好きだったんだよ。



「やめないで」



 やめないでよ。

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