キミは当て馬、わたしはモブ。



「佐久良……」


「好きで、いてよ……」



 そうしたら、なぜだか報われた気分になるの。


 キミが無駄なことじゃないって言うなら、無駄じゃないことになるの。


 わたしは、本当の恋をしてたんだって、思えるの……。



「……すみません。すごく素敵なお誘いですが、俺はもう変えません」


「なんで? わたしから、違う道を提示してあげてるじゃん! 帝塚くんの願ってた形じゃん……!」



 わたしに、恋をさせてよ。



「佐久良」



 必死にしがみつくわたしの腕に、帝塚くんは手を添える。


 優しく包み込むように、ゆっくりと。



「俺は立ち止まることはしません。もうここは行き止まりなんです」


「……行き、止まり」


「俺は無償の愛をあげたくて、恋をしているわけではありません。当然見返りを求めます。しかし、もう彼女は俺を見ていませんから……俺の恋は、している意味がありません」



 ――好きでいる意味がない。



 それは、すんなりと理解できた。


 だってわたしもそう思っていたから。だからみのるくんへの気持ちを消そうと必死になってた。


 振り向いてもらえないなら、画面の向こうに恋する意味なんてない……って。


 でも……帝塚くんの場合なら、希望はまだあるのに……。



「佐久良。忘れているかもしれませんが、俺のゴールはアカネさんと付き合うことではないですよ」


「……!」


「この恋は、ただの通過点にすぎません」


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