キミは当て馬、わたしはモブ。


 そうだった。


 これは、帝塚くんの人生の選択肢を広げるための一部で。


 だから、行き止まりになったら意味がない、か。



「……うん。ごめん。帝塚くんが諦めたいなら、否定するのは間違ってたね」


「いえ、嬉しかったです。佐久良から、初めてああやって言ってもらえましたから」


「違うの。わたしはただ、帝塚くんに感情移入して救われた気になってただけなの」


「? どういう意味ですか?」


「あ……」



 この流れじゃ、言わざるを得ない。


 大丈夫なのかな、言っても。


 お兄ちゃんだって、否定はしなかったけど肯定もしなかった。世間一般目線で言えば、異常な部類。




「わたし……好きな人、いたの。でもそれは、人じゃなくて、ゲームの中の、現実に存在しないキャラクターで……」



 ――――でも帝塚くんは、そんなことで馬鹿にするような人じゃない。


 
 言っちゃった、わたしの秘密。


 せめて、否定はしないでほしいな……。



「……そうですか。じゃあ、一緒にやりますか? 失恋式」



 そうやって笑ってくれて、涙が出そうだった。


 そんなこと、きっと他の誰も言ってくれない。


 帝塚くんだから。


 キミだったから……。

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