キミは当て馬、わたしはモブ。


 話しかけやすくなったって……笑顔、増えてるからかな。


 帝塚くんは笑うとき、ちょっと目を伏せるんだ。


 それが元の眼光の強さを和らげて、柔らかい印象になるのかもしれない。


 なにそれ。


 そんなことで告白するなんて、好きっていうのかな。


 どうせ付き合ってから帝塚くんの性格を知ったら、幻滅して離れていくんじゃないの。


 もっと知ってから告白してよ。


 わたしなんかに帝塚くんを好きな気持ち負けないでよ。



「くっそぉ……」



 気持ちが高ぶって、悔しさが言葉に出てしまう。


 なんなの。


 大切な人って、つまりどういう人なんだよ。


 そこは友達って言ってよ。



「なんでこんな……」


「佐久良?」


「げっ」



 帝塚くんに見つかってしまった。


 いかにも頭の上で疑問符が飛び交っているような表情で近付いてくる。


 よ、よかった。盗み聞きしてたこと、気付いてないかも。



「なんで隠れて聞いてたんですか?」


「バレてたのかぁ……」



 思わず遠くを見た。


 あ、スズメの大群だぁ……。糞は落とさないでよね。

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