騙し愛
社長はどうして私のことを気に入っているんだろう、そう思いながら蕾は椅子に座り仕事に取り掛かる。すると、スマホに誰かからラインが送られてきた。

「お母さん……」

蕾の母親からのラインだった。蕾の母親は、東京から遠く離れた地方に住んでいる。そしてここ数日は毎日のように蕾に連絡をしてくるのだ。

「蕾、今日はお仕事は休み?」

すぐに蕾はメッセージを送る。前に無視をしたら、蕾がメッセージを送ってくるまでラインを送ってきたからだ。

「今日も仕事。明日も明後日も仕事よ」

すぐに既読になり、返事が送られてくる。

「まだ仕事をしているの!?」

蕾はまたかとため息をつきたくなった。母親が長文を送ってくる前に、蕾はすぐに返信する。

「今日の夜なら大丈夫だから!」

こう送っておけば、とりあえず昼間にラインは送られてこない。蕾は遠く離れても親から解放されないのか、とため息をついた。



蕾の両親の口癖は、「男なんだから、女なんだから」だった。

蕾には二つ歳の離れた弟がいる。その弟と並んで両親からはこう言われ続けていた。
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