嘘つきとカゲ。
「馬鹿っ!」
そう叫んで、逃げるように走って行ってしまった。
「馬鹿、ね。あっそ」
フッと笑った俺の頭を、誰かに後ろからバシッと教科書で叩かれた。
俺が「は?」と眉間に皺を寄せながら振り向くと、呆れたような顔をした光が立っている。
「空ちゃん、駄目でしょ、女の子泣かしちゃ」
母親面した光を睨んで、俺は自分を叩いたであろう教科書を掴んで言った。
「人を教科書で叩くのは駄目じゃないのか?あ?」
「空ちゃんには良いの」
ふざけた事を言ってるこいつは、なぜか大学入学当初から俺の母親面してくる女で、俺からしたらこいつの言動はおろか存在自体ふざけている。
こういうのは、無視するに限る。
「…っいで」
…とは分かっているものの、無視すると必ずこいつは俺の首をつねる。