嘘つきとカゲ。
「空ちゃん、どんなにあたしが面倒だと思っても、無視はしちゃ駄目。一番傷つくから。何回言えば分かるの?」
「"一番傷つく"らしいからワザと無視してんだろうが。てか首は止めろって、それこそ何回言えば分かるんだよ。もし神経でも傷つけたらどうしてくれんだ」
「"神経でも傷つけたら"困るだろうから、ワザとしてるんでしょうが。されないように努力しなさいよ」
こんな言い合いは毎日といっても過言では無いほどしている。
言っておくが、俺は友達も恋人も必要ないと思ってる。
面倒くさいだけだし、もしそこに情が芽生えて好きになりでもしたら…
それこそ一番避けたい事態だ。
それなのに。
こいつはこいつで、俺のどこが興味をそそったのかは分からないが、初めて大学の講義で同じになった当初、それも初めて会った時の第一声が、
『あんたに興味持ったから、毎日構うわ』
ときた。
『俺はあんたに興味が湧かないので、是非とも構わないで下さい』
そう笑顔で丁寧に返したはずなのに。
一年がもう少しで終わりそうな頃には、このやりとりも習慣になってしまっていた。
人間の慣れほど怖いものは無い、と実感。