嘘つきとカゲ。
『空っ、泣かないの!大丈夫よ、すぐに救急車が来て、じいちゃんの事を助けてくれるからね。お義父さん、あと少しで来ますからね』
お母さんが電話を切ってこちらに来ると、僕を片手で抱きしめながら、じいちゃんの手をもう片方の手で握り締めた。
救急車が来るまでの時間はすぐだったはずなのに、僕にとってはやけに長く感じ取れた。
病院での先生の診断は、階段から滑り落ちた事による骨折だった。幸いなことに頭や腰に怪我は無かったが、少しの間入院する事になった。
『心配かけてすまんなぁ、優子さん。空。驚かせて悪かった。じいちゃんはこの通り元気だぞ』
足に真っ白いギブスと包帯を付けたじいちゃんが、ベッドの上でピースしながら僕にくしゃっと目尻に皺を寄せながら笑う。
僕はじいちゃんに、いつもよりは弱い力で抱き付く。
あぁ、いつものじいちゃんの体温と匂いだ。
『それにしてもお義父さん、どうしてあんな所で転んだりしたんですか?』
お母さんも僕の隣に来て、じいちゃんに不思議そうに聞いた。