嘘つきとカゲ。
それから少し経って、じいちゃんが家に戻って来た頃、今度はお母さんに悲劇が起きた。
『お買い物に行こうか、空』
お母さんに手を差し出されて、僕は笑顔で『うんっ』と返事をして手を繋いだ。
お母さんと2人で歩く散歩道は、風景のどこもかしこも優しく見える。
手から伝わる柔らかな暖かさが心地良い。
『ねぇ、お母さん』
僕は上を向いて、お母さんの目と視線がぶつかるのを待つ。
『なぁに?空』
お母さんのにこっとした笑顔と視線が合わさって、僕は満足気に話し始める。
『あのね、僕この前幼稚園で先生に褒められたんだ』
それを聞いてお母さんはふふっと笑った。
『そう、空はどうして褒められたの?』
『あのね、僕ね、先生の為に粘土でお城作ってあげたんだっ。きっと先生が住んだら楽しいよって』
僕が話すと、お母さんが少し拗ねたように言った。
『先生が羨ましいわ、空、お母さんにもお城を作って?空とお母さんとおじいちゃんが一緒に住めるような素敵なお城をお願いね』
それを聞いて僕は嬉しくなって、
『うんっ』
と満面の笑みで返事をしながらお母さんと繋いだ手をぶんぶん振り回した。