嘘つきとカゲ。

買い物は案外早く終わり、僕はおまけ付きのお菓子も買って貰えて、にこにこしながらお母さんと手を繋いで帰り道を歩いた。

信号が赤になり横断歩道で止まっていると、横に僕と同じ位の男の子が、父親と手を繋いで同じように信号が変わるのを待っていた。


『パパ』

男の子は父親と繋いでいる手をぎゅっと引っ張ると、父親もかがんで男の子と目線を合わせた。

『どうした?』

『おんぶしてっ、一日中歩いて疲れたよっ』

男の子はだだをこねるように父親に抱きつくと、仕方ないなぁというように父親は男の子の前にかがんだ。

『ほら、早く乗りなさい。信号が変わっちゃうから』

男の子はパアァっと笑顔になると、飛びつくように父親の背中に飛び乗った。

『いてっ…こら、飛び付くんじゃない。それにしても重くなったなぁ』

父親はよいしょっと男の子をおんぶすると、『あっ、パパ!信号青になった、しゅっぱつしんこー!』と言う男の子の声に『はいはい』と苦笑しながら歩き出した。

『パパー?』
『どうした?今度は肩車とか言うなよ』
『違うよぉー、パパ大好きー』
『パパもだよ』

クスクス笑う父親とニカッと笑うその親子を、僕は無意識に見つめていたらしい。


『…ら、空、どうしたの、もう信号点滅して、あ…もう一回待ちましょうね』

苦笑するお母さんに気づいた時にはもう信号は赤になっていた。

お母さんの手をぎゅっと握って、でもそれだけでは何かが足りなくて、お母さんにぎゅっと抱きついた。


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