嘘つきとカゲ。
お母さんも僕の視線がどこに向いていたか位すぐ分かるだろう。
僕はあの家族を見て、羨ましいと思ってしまった。
そう言ったらお母さんは傷付くだろうか。
お母さんもじいちゃんも大好きなのに。
『お母さん』
『ん…?』
『大好きだからね』
『…うん、ありがとうね、空。空は優しいね』
お母さんは僕の頭を優しく撫でながらそう言った。
優しくなんか無いのに。
信号が青に変わっても、お母さんと手を繋いでも、僕はなぜか泣きたい気持ちでいっぱいだった。
空は僕の心を移したみたいに、少しずつ夜の闇を運んで来ていた。