嘘つきとカゲ。
いつもよりも少し遠回りをして、帰り道を歩いていた。
お母さんが僕の気持ちを察して落ち着けようとしたのか、
はたまた自分自身の気持ちを落ち着かせるためにこの遠回りの道を選んだのかは分からない。
ただ今となって分かるのは、遠回りなどせずにいつもの道を通って帰れば良かったという事だけ。
あまりにそれは突然すぎて、何がどうなってあの獰猛な犬が飛び出して来たのかは分からない。
気づいたら僕の前には涎を垂らした息遣いの荒い犬が居た。
『空っ!!』
犬が僕に向かって来るのと、悲鳴に近い声で僕の名前を叫んだお母さんが僕の前に立ちはだかるのは同時にも思えた。
お母さんは足を犬に噛まれ、それでもなおその犬を遠ざけようと必死に暴れて戦っている。
『目の前の家に逃げるのよ!空!…このっ』
お母さんの足も、それに加えて腕も血だらけで、僕は半分狂ったようにその家に走りドアを叩いた。
ドンドンドンドン
『助けて!』
ドンドンドンドンッ
『お母さんを助けてー!!』