ホームズの子孫に嘘はつけない
私が椅子に座っている二人にお茶を出すと、「ありがとう」と二人は微笑む。そして、グレッグソン警部はまたホームズさんに自慢話を始めた。

「和香、最近何か変わったことはあるかい?」

不意にレストレード警部に訊ねられ、「えっ!?」と私は肩を震わせる。なぜか、ワトソン先生やホームズさん、そしてグレッグソン警部も私を見つめた。

「えっと……」

私はメールのことを話すべきか悩む。私の服のポケットに入れられたスマホには、今もメールが届いたと振動が教えてくれていた。きっとアーサーだろう。ゾクっと寒気が走る。でも……。

「大丈夫です。平和に過ごせています」

微笑んで私は言う。ホームズさんたちは事件の捜査で忙しい。同居人である私よりも民間の人を助けた方がいい。こんなメールを相談するなんて、ただの迷惑だ。

「少し、お手洗いに行ってきますね」

さっきからスマホの振動が止まらない。何度もアーサーがメールを送っているのだ。

部屋を出て、トイレへと向かう。個室に入って鍵を閉め、すぐにメールを開けた。
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