春雨と桜花の初恋幻想曲
十四時五十六分、
時雨は舞台裏で待機していた。

ちょうど休憩時間を挟んでいたので、
時雨の番までにはまだ時間があった。

反響版の隙間から客席をのぞみこむと、
真ん中の方の席に美樹の姿が見えた。

時雨は美樹がどこにいても、
見つけられる自信があった。

美樹は緊張している様子だった。
そわそわしている美樹を見て、
何でお前の方が緊張しているんだと、
時雨は笑ったしまった。

ーカチッカチッ

徐々に近づいてくる出番に、
時雨の心臓はドキドキと音を立てた。

それはとても良い緊張感だった。
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