春雨と桜花の初恋幻想曲
「私、心臓病なの。生まれつきの。」

そう言った美樹に、
桜都は驚くと同時になんだか納得した。

だから体育の授業を毎回休んでいたのか、と。

けれど、問題は別にあった。

「今の医療はずいぶん進んできてるから、
徐々に治りつつあったの。それなのに、、、
それ、、なのに、、っく、。」

美樹の目にはまた、涙が溜まっていた。

ゆっくりでいいよ、桜都はそう言って
美樹の背中をさすった。

「私ね、、、それなのに私、、、
あと一年しか生きられない、、、っく、
、、、うっく。」

もう止まらなかった。

美樹の涙は大きな目から再び溢れ出てきた。

けれど、そんな美樹の背中をさすってあげる
余裕は、桜都にはもう無かった。

“あと一年しか生きられない”

その言葉は桜都に重くのしかかってきて、
離れようとしなかった。
< 50 / 60 >

この作品をシェア

pagetop