春雨と桜花の初恋幻想曲
父は海外の美しい風景や、親切にしてくれた
現地の人の話などいろいろ話してくれたけれど、その大半を占めていたのは、プラハで出会った
一人の日本男性の話だった。

「彼は清宮さんといって有名なピアニストでね、桜都の一つ下に息子さんがいらっしゃる
んだ。」

だいたいそんな感じのことを言った。

それから父は話を続けた。

清宮さんとの出会い、
案内してもらった観光地、
清宮さんの息子さんの話。


けれどいつの間にかその話は、
思わぬ展開を迎えた。

「だから来週、コンサートに行こう。」

それはあまりにも唐突で、少々理解しかねた。
父が言うには来週、その、清宮さんの
息子さんがピアノコンサートに出るから、
家族で聴きに行こう!というわけなのであった。

そのピアノコンサートは、
コンクールの入賞者が演奏する
特別なコンサートらしく、
チケットを取るのが難しい中、
三枚分のチケットを父がなんとかとったらしい。

もうチケットを取ってしまったのなら、
行くという選択肢の他なかった。

桜都はそれまで、
ピアノというに興味を持ったことがなかった。

けれど不思議なことに、何故だかとっても楽しめそうな予感がしてして、少しだけワクワクした。
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