23時41分6秒
「では、さっそく食べましょうか」
「いただきます」
「いただきます。美味しそうだな」
フォークでそっとハンバーグの端を
押さえてナイフを当てると
力を入れなくても簡単に切れてしまう程
とても柔らかかった。
肉汁がジュワッと溢れ出し
上にかけられたトマトースに
溶け込んでゆく。
肉汁とトマトソースが滴るハンバーグを
ゆっくりと口へ運ぶ。
「……美味しい!」
気づいたら口角が上がっていた。
料理を食べて笑みが溢れたのは
久し振りのことだった。
「気に入ってもらえてよかったです」
そう言って彼は口角にトマトソースを
つけながら優しく微笑んだ。
まるで宝物を見つけた少年のような
表情で何故か胸がズキっと痛む。
そして私と彼は話もせずに
夢中でハンバーグを食べ続けた。