23時41分6秒
復讐目的とはいえ彼と出会い、
色んな考え方や価値観に触れて
彼に対する気持ちがただの興味では
片付けられないものに変わっていく。
夜空を照らす明るい満月。
雨上がりの綺麗な虹。
自然の素敵なものに出会うと
彼は嬉しそうに私に教えてくれる。
私は日常で些細なことでも嬉しくなる
ようなことを探すのが癖になった。
そのような出来事に出会った時、
なぜか彼の顔が思い浮かんでしまうのだ。
彼と今度会ったときの話題にしようと
考えていたからだろう。
「茉莉花さん!
遅くなってごめんなさい!」
付き合い始めてひとつだけ変わったのは
お互いを名前で呼ぶようになったことだ。
でも、相変わらず会話は敬語のままだ。
「いえ、私も今来たところです。
お仕事、忙しかったのですね」
「今日は早く終わる予定だったのですが、
急に業務が入ってしまって…」
「それは大変でしたね。
お疲れ様でした」
「茉莉花さんもお疲れ様です。
では、行きましょうか」
そう言ってドアを開けてくれるところは
ずっと変わっていない。