23時41分6秒



私達の手は繋がれたまま、街まで歩き
タクシーを拾った。

タクシーに乗り込む際に、一瞬だけ
離された手はドアが閉まると
再び繋がれた。


展望台からこの街まで随分と長い距離を
歩いたけれど、不思議とあっという間
だった。

もう歩きたくない。あとどれくらい?
そんな言葉は頭か浮かばなかった。

ただずっとこのまま先の見えない
闇の中を歩いていたいと思った。

母が亡くなり、一人ぼっちだった頃は
私だけ幸せにはなってはいけない…

そう苦しみもがきながら、深さの
わからない闇の中で怯えながら
ずっと過ごしてきた。


今でもその苦しみが癒えたわけではない。

繋がれた手の温もりが、闇に対する
恐怖ですらも和らげていった。 


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