23時41分6秒
「…君は、大切な人に裏切られたことが
あるか?」
男性は、撫でられて満足したのか、
カウンターを飛び降りて入り口へと
向かうマリーを見送りながら呟いた。
「本当はあるんだろう…?」
男性は私の頭の中を、隅々まで
探るような目で見つめてくる。
その言葉に私は動揺し、手の甲の傷口を
押さえていた紙ナプキンを落として
しまった。
「痛っ」
慌てて膝を折り、床に落ちた
紙ナプキンを拾い、立ち上がった拍子に
カウンターで頭を打ってしまう。
「そんなに動揺しないでくれ。
ちょっと意地悪しただけだよ」
男性は、含み笑いを浮かべるとこう続けた。