23時41分6秒
顔を上げるとスーツ姿の見知らぬ男性が
私に傘を差していた。
顔を上げると視線がぶつかる。
前髪の間から覗く切れ長に
縁取られた目の輪郭の
真ん中で光る黒い瞳が、
私の瞳を捉えて離してくれない。
凛々しい眉毛と鼻筋の通った鼻
口角がきゅっと結ばれた桜色の唇。
雨粒が黒髪を濡らし長い睫毛から
零れ落ちる滴は涙を流しているようで
空から降ってくる雨粒と
瞬きするたびに涙のように頬を伝う
滴がゆっくりと地面へと落ちてゆく。