その人は俺の・・・

ブーブー。

【次は?】

あ、もう催促?
そうか、御主人がいないから…。それでも電話して来ないところは冷静だな。帰るはずのない人が予定を変えてこっそり帰って来たら。うっかり話し声を聞かれてしまうかも知れない。
そこまで考えたかどうかは定かではないけど。メールにしておいたことは賢明かな。

【早いですよ。今日、終わったばかりじゃないですか。それに次って図書館て伝えたでしょ?その次の場所?】

正直、まだノープランだ。公園、…美術館。そして図書館。静かで大人しめな場所ばかり選んでいる。

【違う、ごめんなさい。図書館のこと、すっかり忘れてたの。最後の印象が強くて、…落ち着かなくなって、連絡しちゃった】

あ。…素直だな。…上手ですよ。

【連絡とか特に入ってなかった?家電とか、あるでしょ?予定時間をオーバーしたから…そっちに連絡とか入れられてなかった?】

【留守電にしてたらおかしなことになったらいけないと思って、そのままにしてたけど、着信もなかった。大丈夫】

…やっぱり、この人、賢い人なんだ。いや、馬鹿にしてる訳じゃない。留守電にして出掛けてたら、時間を過ぎて居なかった時、電話は留守電だともろヤバいもんな。してなかったら、し忘れて出掛けてたって言えるか。それもきっと夕方は買い物に出ていたと言えばなんとかなるだろうし。向こうだって探りを入れたとか知られたくないから、したくても連絡は我慢するかな…。

【ごめんなさい?なんだか、心配かけて】

あ、あぁ。間が空いたから気にしたのか。

【声が聞きたくてって、電話があるかも知れない】

溺愛に近いほど愛されてるなら、当たり前にありそうだ。

【そう。夜、寝る前にはかかって来るはず】

…当たってしまったか。出張に行ったらいつもなんだな。それも……一方的な思いなら、重いのか。
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