その人は俺の・・・

……この際よ。

「…思いきって言っちゃうけど。どのくらいが頂点なのかは、経験がないからよく解らないんだけど、私、かなり今、ドキドキが凄いの」

「はい」

え?はい?…はい、そうなんですよ?

「まだ頂点なんて…まだまだですよ。だって、まだ手を繋ぐ、抱きしめた、くらいしかまともなことはしてないですよ?当然、キスとか、その先?そんなことはしてないですよね?だから、まだドキドキとしては序の口です」

はっ。そうだった…。でも、私、キスもその先もしたことがないとは違う。経験はある。私はしてる。夫としてる。夫とは…。
違う人、ドキドキする人とするのはまた違うってことなのよね…。でも、それは例え話で、本当にはしないよね。するはずはない。

「ん?」

「ううん。…ううん」

「妄想、してる?」

「あ、ううん。うん、ううん。追いついていかない」

「ん?」

「ううん」

とんでもないことに今更気がついてしまった。このまま続けてしまっては、私に欲が出てしまうかも知れない。
…決して嫌じゃない、でも、義務だと思ってしまうようになってしまったもの。それが…、義務でもできなくなってしまうかも知れない…。意識する人ができたから…。
私は……樹君が好き。……好き?…駄目よ。でも…。

「愛生さん?追い出されちゃったから、ランチタイムにはなってるから行きましょうか、店…カレー屋さん」

…。

「…そんな…駄目よ、駄目かも知れない…」

「え?11時半過ぎてるし入れますよ?…心配するほど辛くないですよ?」

「……え?あ、違うの。えーっと。違うの、違うのよ」

「どうしたんです?」

「樹君、駄目、私……。このままだと会えなくなっちゃう。樹君に会いたくなっちゃうから。樹君の事考えちゃう。…今日、凄く楽しみだったの。一週間が凄く長くて、やっと今日になって。…大したことじゃない…着替えに手間取ることなんて…だけどドキドキしちゃって時間ばっかりかかっちゃって。だけど……、だから、駄目。………このままじゃ、毎日会いたくなっちゃう…」

「…え?」

あ……終わりだな。まずい…もうこれは無理だ…。

「愛生さん。カレー、止めましょう。それから、今日で終わりです。教室はスパッと終わり。
時間も早いですが、ここで、…さようなら」

樹君…。あ。私、言ってはいけないことを言っちゃった…。もう、終わりだ…。
……爆発しちゃった。
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