その人は俺の・・・

【解りました。こちらこそ上手く立ち回れなくて、至らなくて申し訳ありませんでした。料金のことは要らないです】

これを送ってしまえば終わりだ。……。
どうしようか迷った。なぜ迷う。多分、きちんと話してないからだ。

一度、全部クリアした。
また同じ文言を入れた。送信した。

教室を止めて、どうするのだろう。
元の時間の過ごし方に戻るだけか。その時間、今まではどう過ごしていたのだろう。
毎日、綺麗に、ゴミ1つないくらい、掃除をしてるのだろうか。
時間をかけて作る、そんな夕飯のメニューの準備に時間を使っているのだろうか。
お茶をするにしても一人で準備をして、一人静かにケーキをいただいたりして。
恋ではない、それで生まれるものとは違う……深い溜め息ばかりの毎日を過ごすのだろうか。

何一つ解らないものを…きっと寂しいんじゃないかと想像して、決めつけてはいけない。
愛されていると、…のろけではないけれど、それって幸せってことよねって言ってた。
愛されている。間違いなく、愛されている、はずだ。それが重く過剰過ぎるものであっても。
だから、何も……俺が思う必要はない。俺が立ち入る、そんな領域ではないということだ。
何かあれば、それは俺が誤解を解かなければならないとは思う。その責任はあると思う。


メールを返して翌日、ドアポストに封筒が入れられていた。

何も書かれていなかった。
ある程度の厚みと重さがあった。
これは料金だと思った。しかも、多すぎるくらい入れられていると思った。

俺は封も開けずにそれをしまった。
要らない、返しますと連絡をしたところで聞いてはくれないと思った。
いつか、会うことがあるなら、その時渡そうと、そう漠然と思った。
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