オオカミさん家の秘密
姫になって暫くは本当に幸せな日々だった。
姉が気づくまでは。
私の姉は私が手に入れたものなんでも奪っていってしまう、そんな人だった。
だからこそ、嵐王のことはバレたくなった。
やっと見つけた私の居場所。
なんでも持ってるお姉ちゃんにはバレたくなかったの。
…でもバレちゃった。
隠し事下手なのかなあ…
涼平が連れてきたのがウチの姉。
見た瞬間倒れるくらい血の気が引いた。
…ああ、また奪われるのかって。
お姉ちゃんは見るからに連を狙ってた。
「相川明里って言いますー、千星の姉です!」
お姉ちゃんは私より1つ歳上。
嵐王の幹部の中で1人だけ、涼平がお姉ちゃんと同い年で、泣いてたのが気になって連れてきたんだって。
…ここに来るための嘘泣きに決まってる。
「明里と千星似てるよね〜」
双子の拓と滝が私とお姉ちゃんを見比べてニコニコ笑う。
…内心私はビクビクしてた。
お姉ちゃんならやりかねない。
「…」
お姉ちゃんは涼平と話しながら私を睨みつける。
「…連、私、帰るね」
「どうした千星?」
「なんでもない…帰る…」
私は逃げるように幹部室から飛び出して歩いて帰るには遠い道を走った。
「…千星!」
「…連…」
「どうしたんだ?」
バイクで追いかけてきてくれた連を見て涙が溢れた。
「…連っ…」
「千星…?」
「あの、ね…」
私は連に全てを話した。
お姉ちゃんのこと。
お姉ちゃんの性格。
全てを話して理解してもらった。
「そんなこと…」
「あるの…信じて…」
「俺は千星を信じるよ。」
優しい眼差しの連に安心して私は縋るように連に抱きついた。
信じるよ。
その一言だけで私はあそこにいられる、そう思ってた。
1週間後にあの事件が起こるまでは。
「千星、お前、明里に嫌がらせしてたの?」
拓が私を睨みつけながら低い声で言う。
…嫌がらせなんてしてない。
けど、お姉ちゃんの体は傷だらけ。
…絶対自作自演だ。
「…して、ない…」
「あとお前、紫蛇に俺らの情報売ってるってほんと?」
…紫蛇なんて知らない。
嵐王の敵対する族ってことしか知らない。
なんで私が疑われてるの?
「明里が言ってたんだよ。」
「なんでお姉ちゃんの言うこと信じて私のこと信じてくれないの?!」
私の方が先にいるのに…
…なんだ、結局みんな信じてくれないんじゃん…
「…千星…」
…連でさえ、私のことを信じてくれない。
付き合ってるのに、なんで…?
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