オオカミさん家の秘密
「狼は千星と暮らせて嬉しいんだよな。」
…虎…
余計なことを。
「お、怒ってら。」
「…やっぱり顔変わらなすぎてわからない…」
顔のことは仕方ない。
記憶が戻れば変わるかもしれないけど。
今は無理だ。
「じゃあ、父さんにも了承とったし、部屋に案内するよ。」
「ありがとう」
「部屋には変装用のウィッグが沢山あるから好きなの選びな。」
千星の髪はショート。
肩につかないくらい短い髪。
…だったらロングくらいのでいいか。
「…ロングにするか。」
「うん。」
千星は衣装ルームに入るなり目をきらきらさせている。
「気に入った服も着ていいからね。」
「え、これ狼ちゃんの?」
「そう。だけど私はパーカー類しか着ないから。」
まあ、令嬢モードになる時はこういうの着るんだけどね。
ほら、よくご令嬢が来てるフリフリ系の。
あんなにフリフリじゃないけど、シンプルなクラシック系のドレスを着る時ある。
「…めんどくさいし、明日行く。
千星、休みの日に必要なもの揃えよう。」
「うん、ありがとう狼ちゃん。」
千星の部屋から出て私と虎は自室に向かう。
「…狼。」
「なに?」
「今日総会あるけど忘れてねえ?」
「…あ」
…頭から飛んでた。
てことはあいつも来るか。
汐見連。
千星を裏切った張本人。
「…めんどくさい…」
「そう言わずに」
総会は大したことねえんだ。
袴が…めんどくさいんだ…
毎回母さんが着付けてくれるけど…めんどくさい。
「狼!やっと見つけた!」
…見つかったか…
「着替えるわよ!」
「…」
渋々私は着替える。
「…跡、残っちゃうね…」
「あ?」
母さんが服を脱いだ私の背中に触れる。
…ああ、刺された所か。
「…痛む?」
「別に。」
「…女の子なのに、ごめんね。」
「別に気にしてない。
それに女だからとか、気にしない。」
だって体は女だけど、殺し屋としての訓練を受けてきてる私の心は男並みだから。
痛みすら忘れるくらい過酷な訓練受けてきてるんだ。
このくらい大したことない。
「…今日は赤にしようか。」
「なんでもいい。」
袴を着付けてもらった私。
私を椅子に座らせ、髪を結い上げる母さん。
結い上げるというか、ただ普通に後ろで三つ編みしただけ。
…袴ってほんとに動きにくいから好きじゃない。
「出来た。」
「おう、じゃ。」
私はそうそうに部屋から出て総会をしている会議室に向かう。
ーガラッ…
シーンと静まり返った会議室。
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