オオカミさん家の秘密
その方がやりやすいって言ってたもんね。
「ねぇねぇ、相田さんってどこから来たの??」
「父の都合で色々なところを転々としていたから…」
「そっかあ〜、仲良くしようね!」
…本当に誰も気づかないんだなあ…
ここまで気づかれないと流石に悲しいや。

「ーん〜…疲れた…」
放課後、狼ちゃんと一緒に帰る訳じゃなくて、しばらく河川敷でぼうっとしてから帰ってきた。
「ただいま〜」
「おかえりなさいませ、千星様。」
狼ちゃん達のお家に仕えている相澤さん。
すごい丁寧な人でいいんだけど…
「相澤さん、千星でいいって何度も…」
狼ちゃん達だけじゃなくて私にまで様を付けて呼んでくれるの。
「あ、千星おかえり。」
「ただいま狼ちゃん。」
狼ちゃんはパーカーを着ておうちモードだ。
「今日はどこにも行かないの?」
「いや、そのうち出かける。」
「おかえり千星ちゃん!」
狼ちゃんの後ろの方から明るくて優しい声。
「ただいま、桜さん!」
狼ちゃん達のお母さんの大神桜さん。
本当に母親?って言いたくなるくらい綺麗で若い人。
「もう〜、お母さんでいいのよ、ふふ。」
「お、千星帰ったか。おかえり。」
もう1人奥から出てくる。
「あ、お父さん!」
ニコニコ優しい顔の狼ちゃん達のお父さん。
「はあ、部屋戻ろ。」
「狼、後で資料取りに来いよ。」
「ああ、分かってる。」
狼ちゃんは愛想はないけど心の優しい人だ。
私を受け入れてくれてる優しい女の子。
「狼ちゃん、大丈夫?」
「何が?」
「疲れてない?」
よく見ると狼ちゃんの目の下にはクマが。
「ああ、昨日徹夜して資料見てたからな。」
狼ちゃんのしてる事のこと。
実はよくわかってない。
闇のお仕事だって虎くんが言ってたけど…
よく分からない。
狼ちゃんに聞いてもはぐらかして教えてくれないし…
私一人だけ除け者みたい。
【相川千星side END】

【大神狼side】
またなんか暗い顔してる。
私の事についてかな。
いつか言わなきゃならないとは思ってるんだけどねえ…
今は言う気になれない。
「組長、失礼します。」
「狼か。入れ。」
襖の向こうから父さんの低い声。
この声の時は何か殺しの依頼が入った時。
「そんな無表情で入ってくるなよ…怖い…」
父さんは私の顔を見てオドオドする。
仮にも組長なのに…
「いつもこの顔ですがなにか。」
それにこの顔は生まれつきです。はい。
仏頂面ですみませんね。
虎みたいに愛想ある訳じゃないから、私。
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