オオカミさん家の秘密
ノックをせずに襖を開ける。
「おっ?!どうした2人とも。」
分厚い本を読んでいた父さん。
私と虎を見て驚いている。
「私、学校やめていいか?」
「「は?」」
…そこは親子なんだな。
ハモるな。
「留学する、という体で高校をやめて仕事に集中したい。」
「…まあ狼は既に飛び級で大学卒業してるし…問題は無いけど…」
それは知っていたのか。
「教育を受けていた時から勉強はとっとと終わらせるべきだと思っていたからな。」
まあどちらにしろ高校に行っていたから同じことなのだが。
「うむ、いいだろう。」
「いいのかよ父さん?」
「狼のやりたい事をやらせるべきだ。
その方が記憶も早く戻るだろう。」
…記憶のことは正直考えていなかったな。
やはり記憶を取り戻した方が良いのだろう。
「私の話はそれだけだ。」
私はくるっと背を向けて外へ出る。
足早に部屋に戻り、財布と携帯を持って屋敷の外へ。
「…たまには散歩もありだろ。」
パーカーを被ってガムを噛みながら歩く。
「…?」
ふと目を向けた公園で私は見た事のある男を発見した。
「…嵐王の…
葉山涼平だっけ…」
「僕のことをご存知なんですか?」
…そりゃあんたらのことを知らない方がおかしいのではなかろうか。
一応この辺の治安が守られてるのは嵐王のおかげだと言ってもいいと思ってるから。
「キミは一体どなたです?」
「そんなのお前が知る必要は無い。」
私はパーカーを目深に被って男声を出す。
パーカーを被らなくても今の私を見ても分からないだろう。
ただ、バレたらバレたで面倒くさい。
パーカーをとったら大神財閥の令嬢だとバレてしまうから。
「…その髪色…」
見えたのかよ…
今日風が吹いているから…
「まさか…」
「…」
「大神家のご令嬢ですか?」
「…そうだよ。」
「…なんで…」
こんな所で話される訳にも行かない。
とりあえず涼平の口を押さえつけて私は森の方へ向かう。
「…いつも僕達の総長がお世話になっております。」
「…そうだね。」
「貴方様のおかげで千星のことがわかりました。」
「それはそれで今更過ぎない?」
あの資料渡したのだいぶ前だけど?
「…あの資料を僕達に渡してきた白井さんと何かご関係ありますか?」
「どういうこと?」
涼平は私の目を真っ直ぐ見つめる。
…こいつには隠し事しても仕方ないな。
「…関係ありまくりだよ。」
「どのようなご関係で?」
とりあえずこいつの敬語外させたいな。
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