オオカミさん家の秘密
「まあ出かけたと言うよりは、愛犬の散歩に行ったって言った方が正しいかな。」
愛犬…いたのか…
あの仔犬のことかな?
虎毛で可愛らしい仔犬。
「いつもどの辺散歩してます?」
「さあ…」
決まったコースでは無いのか…
…たとえ見つけたとして何を言うべきなのか…
お嬢様にはもっとたくさんの人と触れ合って欲しい、と思ってしまう。
【汐見連side END】

【葉山涼平side】
「…大神、狼…」
大神家のお嬢様…
綺麗な顔立ちに綺麗なクリーム色の髪。
紫と緑のオッドアイ。
無表情だけどどことなく儚い雰囲気で…
目を離したら消えてしまいそうな雰囲気を纏っていた。
「ん?涼平どうした?」
連は大神家に仕えている。
「え?」
「今お嬢様の名前言ってたろ?」
この間会ったことは誰にも言ってない。
「…なんでもないよ…」
つい最近嵐王に入った白井健さん。
狼の兄だろう。
なぜ偽名を使っているのかは分からないが仲間として入った。
喧嘩も強くて優しさがあって的確な判断ができる。
それだけの器量があれば幹部になるのは当たり前だ。
「…」
健さんは僕の方を見て少し考えている。
「なあ健」
「ん?」
「妹は嵐王入んねーの?」
確かに…
健さんが入っているのに狼が入っていないのは…
「なんなら姫として入ってもらってもいいんだぞ?」
「多分入らないかなあ」
なにか理由があるんだろう…
「悪い、トイレ行きたい。」
「僕案内しますよ。」
なにか目配せをしていたから僕に言いたいことでもあるのだろう。
そう察した僕はトイレまでの案内役を買って出た。
トイレまで行き周りに誰もいないのを確認してから健さんは口を開く。
「俺の本名は大神虎。」
虎…
やはり狼のお兄さん…
「狼から話は聞いている。」
「え?」
「よう。」
後ろから女の子の声がして振り返る。
茂みをひょいっと飛び越えてトコトコ歩いてくる。
「涼平なら信用できると思ってな。」
「…何の話だ?」
…僕のことはバレていないはずだ。
「そう構えるな、睡蓮花の総長。」
何故だ。
何故僕のことを知っているんだ。
「私を誰だと思ってるんだ?」
「…狼…」
「睡蓮花の総長なのに嵐王に入っている理由を知りたくてね。
…まあ同盟を組むか考えていたんだろうけどね。」
睡蓮花は大神組が後ろ盾をしている。
だから知りたいんだろう。
「まあ、その通りだ。」
「だろうなと思った。
それで?どうするつもり?」
僕の中で答えは決まっている。
「同盟は組みませんよ。
千星のことがなければ組んでいたと思いますが。」
「その答えを聞いて安心したよ。
これ、私と虎の連絡先。
何かあれば頼っておいで。」
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