オオカミさん家の秘密
小さな紙切れを僕に手渡す狼。
「俺は幹部室に戻るよ。」
「僕は…」
狼と話したい。
けど戻らないと怪しまれてしまう。
「体調悪くて帰ったってことにしておくよ。」
「あ、ありがとう…」
僕は虎に頭を下げる。
ヒラヒラと手を振りながら虎はそうこの中に入っていった。
「あの、狼…」
「ここじゃなんだし、私の家来る?」
「…はい。」
確かにここで話す内容ではないか…
グレーのパーカーを着てジャージを履いている狼。
数分歩いて大神家の屋敷に着いた。
「私の部屋行こう。」
僕の前を歩いている狼。
僕と身長が頭1つ分違う。
かなり奥まで歩いて狼は襖を開ける。
…こんな奥に部屋があったのか…
狼の部屋は想像していた部屋とは全く違った。
お嬢様なイメージあったから女の子らしい部屋を想像していたのに和風で生活感のない部屋だ。
…生活感がない訳では無い。
女の子の部屋にあったら違和感があるものがあるから驚いているだけだ。
「涼平のことは信用してる。」
「…」
「だから部屋を見せたの。」
低めのタンスに木の机。
布団は丁寧に畳んで端の方に置かれている。
窓も障子で灯りが遮られている。
壁には日本刀と短刀と拳銃がかかっている。
木の机の上には分厚いファイルが何冊か積まれている。
「…シンプルだね。」
「まあ部屋だけ見たらね。
私が見てほしいのはこのファイル。」
狼は机の前に立ってファイルを指さす。
「…それは?」
「見たらわかるんじゃない?」
少し震えている僕の手。
その手を落ち着かせてファイルを開く。
1枚ずつ顔写真になっている。
「…え?」
「…ふふっ」
ファイルを捲っていっていた僕はあるページに綴じられた1枚の写真に驚きを隠せなかった。
「…千星、だよな…?」
「うん。」
千星は確か…殺されて…
「なんでこれを…狼が?」
このファイルの中に閉じられている人は全員…
「もう答えわかってるんでしょ?」
「…」
わかっているに決まっている。
まさか、狼は…

「私が、殺し屋Wolfだから。」

ファイルの中にいる人達は全員、殺し屋Wolfに殺害されていた人達。
…じゃあ、千星も…?
「…はあ…ちょっとまってて。」
放心してる僕を横目に狼は部屋から出ていった。
僕は放心して頭が働いていない。
…なぜ僕は部屋に呼ばれたのか。
…まさか僕も殺されるのか…
「戻ったよ。」
信用してるって言ってくれたし、殺されることはないはずだ。
「わ、ほんとだ涼平だ!」
狼とは違う女の子の声。
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