オオカミさん家の秘密
「その発想はなかったな。」
母さんを少し遠ざけたこの男。
…頭ではわかってる。
私が本当に憎むべきなのはこの男だって。
「…ならば俺も2刀流にするまで。」
…本当にするとは…
正直刀は苦手なんだよ…
「刀苦手なんだけど、いいのか?」
「構わんよ。慣れてしまえばいいさ。」
…苦手って、そういう意味じゃないけど。
私は1つ息を吐いて、サッと間合いを詰める。
「…は?」
「私の言う苦手は、加減ができないって意味だけど?」
特に2刀流は。
力加減が難しいからあまり好きじゃないんだよねえ。
私の本当の相棒は恐らく今、私の背中に刺さってる。
そして私の拳銃のホルスターにも拳銃と一緒に挟んである。
何太刀か浴びせたら出すつもりだけど、ちょっとピンチかもねえ…
目が霞んできちゃった。
助けるなんて大きなこと言っておきながら結局足手まといになっちゃうんだよなあー…
「…はっ…」
「息が上がってきてるぞ?
殺し屋Wolfなんてこんなものなのか?
…何だ、世界NO.1の殺し屋も大したことねえな。」
…はっ…
バカにしてくれるねえ…
まあこれで手を抜かなくてもいいってことが分かったね。
「…おるァっ!!」
…防がれたか…
だけど、防ぐので精一杯だね。
次には間に合わないよ。
ーパンッ!
部屋に鳴り響く銃声。
弾丸は見事脇腹に命中。
「…ふっ、完膚なきまでにされたか。」
「…はあっ…はあっ…」
私は母さんを縛っているロープと手枷を外す。
ーバンッ!
「お嬢様!奥様!」
「狼!母さん!」
「…はあっ…はあっ…」
虎と赤目さんの顔を見た私は安心したのか、今更激痛が襲いかかってきた。
あの男…
刺しただけじゃなく、裂いたな…
しかも縦に…
「赤目…さん…これ…抜いて…」
「お嬢様?!」
私は赤目さんに背中を見せる。
「い、行きます…」
ーズボッ…
「…いっ……っ」
「出血止まらない…」
赤目さんは自分の上着を私の胴体に巻き付けて止血を試みる。
「虎…あの男、頼んだ…」
「あ、ああ…」
「母さん…帰ろう…」
私は赤目さんにおんぶされながら家まで戻る。
父さんのいる組長室で無理を言って降ろしてもらい、報告書を貰いに行く。
ーコンコン…
「…しつれ…しま…」
「狼?!」
…名前、呼ばれたの…いつぶりだろう。
「組、長…報告書…くださ…」
「報告書なんていいから!早く傷の手当!」
父さんはフラフラな私を横にして部屋から出ていった。
…多分医者を呼びに行ったんだな…
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