オオカミさん家の秘密
「私口説いてる暇があるのならこの用紙を見ておきなさい。」
私はカバンの中から数枚にまとめた束を渡す。
嵐王についてこと細かく記したバカでも読める紙だ。
「行くよ。千星。」
「あ、おい、話は終わってねえぞ!」
「誰でもあなた達の言うことを聞くと思ったら大間違い。
私は絶対あなた達の言うことなんて聞かない。」
ただでさえ人から指図されんの嫌いなんだ。
そんな人間が増えてたまるか。
「あの、白井さん…」
「心でいいって。
…健、ほんとに決めたの?」
「…ああ。相川さんなら大丈夫だ。」
「?」
私が休んでいる間、虎には千星の動向を探ってもらってた。
家の中でのことはある程度聞けば出てくる。
嘘をつくことが出来なくて、隠し事が上手。
「…なんの話し?心ちゃん…」
「…千星、あなたに話したいことがあるの。
それを聞いても尚、私を友達だと言ってくれるのか知りたくて…」
「…?」

放課後。
私と虎は千星と共に家に帰ってきた。
「ここって、…謎だらけの…」
「そう、大神家。」
悠々と入っていく私と虎の後を追いかけてくる千星。
「入って。」
今日のために開けといてもらった応接間。
部屋は見せれる勇気がない。
私は千星に出す用のお茶を持って応接間に戻る。
「…お待たせ。」
「…??」
「ちょっと待っててくれる?」
私は千星が頷いてから虎と共に部屋を出る。
脱衣所でウィッグとカラコンを外して応接間に戻る。
「…失礼。」
「…心、ちゃん?」
「そう。」
千星は私の姿を見て驚きが隠せない様子。
「えっと…どういうこと…?」
「話すよ。
私達はここ、大神家の一族。」
流石にまだ私が殺し屋という所までは話せなかった。
言って、幻滅されるのが怖い。
「…じゃあ虎くんはここの跡継ぎってことー?!」
「そういうこと。」
「すごいっ」
千星は私を真っ直ぐ見つめてくる。
「…じゃあ狼ちゃんは?」
「私は虎のお手伝いとして働くの。」
殺し屋とはさすがに言えない。
怖がられることが怖い。

「凄いね!」

嫌われる…と思って下を向いていた私の耳に飛び込んできたのは予想外の言葉。
「だって、皆がありがたみを感じてる大神一族だよ??」
ありがたみ?
「この街の治安が守られているのはこの大神一族のおかげだよ?」
千星はにっこり笑って私を見つめる。
想定外すぎて私は放心。
「えっと…狼ちゃん。狼ちゃんの顔が見たい。」
千星は私の前に立って私の顔を見つめる。
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