恋はオーロラの 下で
γ. 揺れる心
帰宅後、今日子にメールして明日会う約束を交わした。
「もうクタクタ。」
スマートウォッチを手首から外して
バスタブにゆっくりつかった。
目を閉じるとやはり疲れを感じた。
「はあー。」とため息が響いた。
全身の筋肉がほぐされるようだ。
シャワーも浴びずにそのままバスルームを出た。
駅前で買ったサンドイッチを頬張りながら
スパークリングワインを瓶口から直接あおって飲んだ。
「ふうー。」
なんて言うか重い一日だった。
カッパは玄関に吊るしたが
登山靴は明日手入れをしようと思いながら数秒で寝入った。
海老原さんからのメールが受信されたと
バスルームに置きっぱなしのスマートウォッチがブーブーと通知していた。
翌朝、軽くジョギングするためスマートウォッチを探した。
バスルームにあった。
一応防水機能があるものを奮発して買ったが
大切に使いたいがためシャワー時は外していた。
いつもなら就寝中も付けたままだったが
昨夜は疲れていたせいか忘れていた。
画面を軽くタッチした。
海老原さんからの着信があったが無視して外へ出た。
トレッキングを楽しむためなら
毎日のジョギングは欠かさなかった。
少しでも体力を維持したかったからだ。
3キロ走って戻った。
シャワーの後、洗濯機を回し、その間にトーストと紅茶で朝食を済ませた。
ランチ前に装備を完璧に手入れした。
今日子が指定した近場のカフェには
約束の時間の15分前に着き
店内の席に座って待った。
地元の駅にある比較的大きな商店街の中にあるごく普通のカフェだ。
「お待たせー。」
休日のランチを共にできるような恋人どころか友人もいない私にとって
幼なじみの今日子とは腐れ縁であった。
「何食べる?」
二人でメニューを見合った。
「私、ナポリタンね。」
「じゃ、私はミートソースで。」
このカフェはサイフォン式なのでコーヒーはゆっくり楽しめた。
注文したものがくる前に私は切り出した。
「今日子、海老原さんに私の写真を送ったでしょ、どうして?」
「そんなに怒らないのー。あの男はくそ真面目で、超がつくほど堅物だから社内じゃ誰も近寄らないし、女子は皆敬遠よー。ゆり香にはちょうどいいと思って。」
「・・・・・」
私はぺらぺらしゃべる今日子の言葉に絶句した。
「で、会ったの?」
「偶然で。」
「あらー良かったじゃない。話せた?」
「仕方なく。」
「もおーそれならそうと言ってよー。あー来た来た。」
湯気だつナポリタンとミートソースのいい香りに食欲が倍増した。
「ゆり香、食べよ。チーズかけるでしょ?」
「ええ、少し。」
今日子はパラパラと粉チーズをかけてくれた。
「ありがとう。」
「超美味しい、このナポリタン。」
そう言ってケチャップソースが口からはみ出ても舌でぺろりと舐めとって
食べ続ける今日子を見て私も負けずにミートソースを平らげた。
今日子とは保育園・小学校・中学校時代が一緒であった。
高校と大学は違ったが
なぜか連絡は取りあっていた。
私に友達がいなかったせいなのかどうかは定かではない。
二人とも一般的なサラリーマン家庭に育ち
母親同士の交流もなく
こうして付き合いが続く理由は私には他に思いつかなかった。
たぶん今日子は人付き合いが希薄な私のことを可哀そうとでも思っているのか
それは彼女の言動にはこれっぽちも現れなかったが
そんな理由付けしかないように思う。
「もうクタクタ。」
スマートウォッチを手首から外して
バスタブにゆっくりつかった。
目を閉じるとやはり疲れを感じた。
「はあー。」とため息が響いた。
全身の筋肉がほぐされるようだ。
シャワーも浴びずにそのままバスルームを出た。
駅前で買ったサンドイッチを頬張りながら
スパークリングワインを瓶口から直接あおって飲んだ。
「ふうー。」
なんて言うか重い一日だった。
カッパは玄関に吊るしたが
登山靴は明日手入れをしようと思いながら数秒で寝入った。
海老原さんからのメールが受信されたと
バスルームに置きっぱなしのスマートウォッチがブーブーと通知していた。
翌朝、軽くジョギングするためスマートウォッチを探した。
バスルームにあった。
一応防水機能があるものを奮発して買ったが
大切に使いたいがためシャワー時は外していた。
いつもなら就寝中も付けたままだったが
昨夜は疲れていたせいか忘れていた。
画面を軽くタッチした。
海老原さんからの着信があったが無視して外へ出た。
トレッキングを楽しむためなら
毎日のジョギングは欠かさなかった。
少しでも体力を維持したかったからだ。
3キロ走って戻った。
シャワーの後、洗濯機を回し、その間にトーストと紅茶で朝食を済ませた。
ランチ前に装備を完璧に手入れした。
今日子が指定した近場のカフェには
約束の時間の15分前に着き
店内の席に座って待った。
地元の駅にある比較的大きな商店街の中にあるごく普通のカフェだ。
「お待たせー。」
休日のランチを共にできるような恋人どころか友人もいない私にとって
幼なじみの今日子とは腐れ縁であった。
「何食べる?」
二人でメニューを見合った。
「私、ナポリタンね。」
「じゃ、私はミートソースで。」
このカフェはサイフォン式なのでコーヒーはゆっくり楽しめた。
注文したものがくる前に私は切り出した。
「今日子、海老原さんに私の写真を送ったでしょ、どうして?」
「そんなに怒らないのー。あの男はくそ真面目で、超がつくほど堅物だから社内じゃ誰も近寄らないし、女子は皆敬遠よー。ゆり香にはちょうどいいと思って。」
「・・・・・」
私はぺらぺらしゃべる今日子の言葉に絶句した。
「で、会ったの?」
「偶然で。」
「あらー良かったじゃない。話せた?」
「仕方なく。」
「もおーそれならそうと言ってよー。あー来た来た。」
湯気だつナポリタンとミートソースのいい香りに食欲が倍増した。
「ゆり香、食べよ。チーズかけるでしょ?」
「ええ、少し。」
今日子はパラパラと粉チーズをかけてくれた。
「ありがとう。」
「超美味しい、このナポリタン。」
そう言ってケチャップソースが口からはみ出ても舌でぺろりと舐めとって
食べ続ける今日子を見て私も負けずにミートソースを平らげた。
今日子とは保育園・小学校・中学校時代が一緒であった。
高校と大学は違ったが
なぜか連絡は取りあっていた。
私に友達がいなかったせいなのかどうかは定かではない。
二人とも一般的なサラリーマン家庭に育ち
母親同士の交流もなく
こうして付き合いが続く理由は私には他に思いつかなかった。
たぶん今日子は人付き合いが希薄な私のことを可哀そうとでも思っているのか
それは彼女の言動にはこれっぽちも現れなかったが
そんな理由付けしかないように思う。