恋はオーロラの 下で
今日子から突然呼び出しのメールが入った。

用件もわからずにいつものカフェへ向かった。

それも夜の9時である。

「ゆり香。」

今日子が私よりも早く店内にいること事態今までにあり得なかった。

「どうかしたの?こんな遅くに。」

取りあえずコーヒーを注文したがこの時間に飲んだことがなかった。

「ゆり香、海老男とメールしてる?」

「えっ?何、突然?」

「してるの?してないの?」

「してないけど、そんなに頻繫には。」と私は言葉をにごした。

海老原さんとは一度だけしかメールしてなかった。

「そんなことを聞くために呼び出したのかしら?」

話題が海老原さんのことに私は憤慨しつつ言い返した。

「そんなわけないでしょ。会社に来てないよ、海老男。」

「えっ?」

「とにかく年明けからずっと休んでるよ。」

「うそ、だってメールでは何も。」

というよりフェスタの件しか。

それもたったのひと言の返信だ。

「たぶん出張がてらどっかに行ってるらしいと聞いたけどー、ゆり香何も知らないの?」

「私が知るわけないでしょ。」知る権利も何もない。

「ゆり香は気にならないの?」

「どうして私が気にしなくてはならないのかしら?」

「ゆり香ってホント強情だよね、昔から。」

「もう今日子ったら。」私は手元のコーヒーをぐいぐい飲んだ。

「海老男、どこで何してるのかなー、面白くなってきたじゃん。」

「・・・・・」

一体何をどう思えばいいのか私にはまったく見当がつかないでいた。

「ゆり香、ヒント欲しい?」

「ヒントですって?ゴホゴホ。」飲んでいたコーヒーにむせた。

「あっそー、いらないのねー。」

「わかった、教えてちょうだい。」

今日子の前でソワソワと気をもんでしまった。

「出張は海外らしいよ。」

「どこなの?」

「オーストラリアー。」

「オーストラリア?」

「そー、へっへっへ。」今日子は何やら楽し気だ。

「続きを教えて。」

「交換条件ね。」

「交換条件?」

「そー、ゆり香と海老男のその後が知りたいもんね。」

「・・・・・」私は目を見開いて口をへの字にした。

「きゃははは、ゆり香の今の顔ー、海老男に見せたかったなー。」

「今日子!」

「噂じゃ、ニュージーランドに寄るとかって、でも真面目人間がどこへ行こうと社内の反応薄いよ。」

「そう。」

「以上。」

「今日子、ありがとう。」

「ゆり香のおごりねー、じゃまたねー。」

今日子は私を残して帰った。


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