恋はオーロラの 下で
翌朝始発の電車に乗り
数時間後には山頂にたたずむ自分を頭に思い浮かべて一人張り切った。
すがすがしい空気と冷ややかな風の音しかない世界を
すでに味わっているかのごとく思うまま目を閉じて
電車の振動に身を任せた。
「あれ?ゆり香?ゆり香じゃない?」
名前を呼ばれて渋々目を開けたら
目の前に知った顔があった。
いかにも夜遊び帰りの相手の有り様に気分を害された。
「おはようございます。」
私はわざと丁寧に挨拶をした。
「きゃははは、どこへ行くのよ?」
私が返事をしなくても幼なじみの今日子は関係なくしゃべった。
「また山?もーやめてよーこんな寒い朝っぱらからー。」
人の勝手だと言いそうになるのを我慢した。
「また朝帰りですか?」
「そうなのよー帰ってすぐ寝たい。」
「お気をつけて。」
「きゃははは、ゆり香って堅いわねー。」
「私は次で乗り換えますので。」
「そうそう、友達が紹介してほしいって。」
今日子はバッグからスマホを取り出し
パパッと写真を選んだ。
「ど?こんなのなんか?」
アップした男性の顔が画面の中で無表情なのを
私はちらりと見た。
今日子の友人とは思えない真面目そうな印象があった。
「この方がお友達?」
彼女はまたパパッとネイルで光った指を画面に滑らせて
なにやら操作をした。
「今、送ったからメールしてあげてよ。必ずねー。」
「えっ?ちょっと困る。」
ブブッと私のスマホに受信が入った。
「じゃねー。」
光る指をひらひらさせて
今日子は前方の車両へカツカツと歩いて行ってしまった。
数時間後には山頂にたたずむ自分を頭に思い浮かべて一人張り切った。
すがすがしい空気と冷ややかな風の音しかない世界を
すでに味わっているかのごとく思うまま目を閉じて
電車の振動に身を任せた。
「あれ?ゆり香?ゆり香じゃない?」
名前を呼ばれて渋々目を開けたら
目の前に知った顔があった。
いかにも夜遊び帰りの相手の有り様に気分を害された。
「おはようございます。」
私はわざと丁寧に挨拶をした。
「きゃははは、どこへ行くのよ?」
私が返事をしなくても幼なじみの今日子は関係なくしゃべった。
「また山?もーやめてよーこんな寒い朝っぱらからー。」
人の勝手だと言いそうになるのを我慢した。
「また朝帰りですか?」
「そうなのよー帰ってすぐ寝たい。」
「お気をつけて。」
「きゃははは、ゆり香って堅いわねー。」
「私は次で乗り換えますので。」
「そうそう、友達が紹介してほしいって。」
今日子はバッグからスマホを取り出し
パパッと写真を選んだ。
「ど?こんなのなんか?」
アップした男性の顔が画面の中で無表情なのを
私はちらりと見た。
今日子の友人とは思えない真面目そうな印象があった。
「この方がお友達?」
彼女はまたパパッとネイルで光った指を画面に滑らせて
なにやら操作をした。
「今、送ったからメールしてあげてよ。必ずねー。」
「えっ?ちょっと困る。」
ブブッと私のスマホに受信が入った。
「じゃねー。」
光る指をひらひらさせて
今日子は前方の車両へカツカツと歩いて行ってしまった。