恋はオーロラの 下で
ニュージーランドか。

確か南半球のマッターホルンと呼ばれている3000m級の山がある。

マウント・アスパイアリングだ。

まさか、まさかよね。

その夜はなかなか寝つけなかった。

翌朝噂の海老原さんからメールを受信した。

写真だけだ。

画面いっぱいに映った山にまばたきを忘れて魅入った。

マウント・クック。

息をのむくらいの美しさだ。

ニュージーランドのサザン・アルプスにある。

富士山より少し高い山だ。

彼は今そこにいるのかしら。

行きたい。

胸がキュンとなった。

そんな風に思う自分に驚いた。

トレッキングの宝庫であるニュージーランドは夏だ。

日本の冬季に夏季である海外で山歩きを楽しむ彼をうらやんだ。

そんな発想ができて実際に行動する彼を好きになってしまいそうだ。

自主トレのようにはコントロールできない自分の感情があふれそうになった。

メールを返さないではいられなくなった。

「山頂ですか?現地のお話をお聞きしたいです。」

驚いたことにすぐ返信が届いた。

「登頂できるほど俺には体力がない。トレッキング・ウォークがメインだ。」

「帰国されましたらお写真を見せていただけませんか?」

「OK!」

「ありがとうございます。お気をつけて。」

いつ帰国されるのかしら。

聞きそびれてしまった。

海老原さんの写真を楽しみに仕事を頑張ることにした。


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