恋はオーロラの 下で
あれから2週間経った。

今日子からのメールで社内で海老原さんを見かけたと知り

帰国されていることがわかった。

きっと仕事が忙しいのではないかと思い

私からはメールできなかった。

帰国したと一言知らせてほしかった。

私は待った。

そしてこう考えた。

恐らくフェスタまで会えないだろうと。

そんな気がした。

海老原さんをもっと知りたいと思った。

フェスタ前に必ず連絡をもらえるはずだ。

その時でいい。

それで充分だと今はそんな風に切ない思いでいた。

週末は今までと変わらず単独で山に入った。

いつもとは違う感覚があった。

以前は無心に近い精神状態を保てて山を歩けたが

海老原さんを想う時間がどんどん増えていった。

山腹で休憩をとるために岩に腰かけて遠くを見ると

もちろん景色は素晴らしく

冷たい風が頬や髪をなでるように吹き

クリアな空気で深呼吸してリフレッシュしていたことが

今は空を見上げると必ず彼の顔を思い描いてしまい

胸が苦しくなるようなはかないものを感じてぼおっとしてしまう。

またある時は山頂まで登り切らないうちに途中で引き返して下山したり

気持ちがゆらゆらと揺れてしまうようになった。

いずれは山なんかどうでもいいと思うようになる自分がいるのではないかと

複雑な感情に驚いたり

わけもなく涙がでたり

これが恋なのかどうかもわからず

一日中、外出しないでゴロゴロして過ごす休日もあった。

会いたい。

ただそれだけ。

このひと言を思うだけでハラハラと涙が頬をつたった。

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