蒼くて、紅い… 甘くて、苦い…

駅に着くと
人混みに先生の姿をみつけた…


私の足は止まった


なんで、いるの?

なんで見つけたんだろう、私



「佐藤、どーした?」

「紅」


藤本くんが私に尋ねる声と
先生が私の名前を呼ぶ声が
重なった



先生は私の隣にいる
藤本くんに目を移した


「こんばんは」

藤本くんが先に言った


きっと藤本くんは
この人が私の心の中の人だって悟ったと思う



「こんばんは」

先生が藤本くんに言った



「じゃあ、佐藤、ここで…
また、新学期…」

藤本くんが私に言って
先生に会釈して行こうとした



私は何故か
藤本くんの腕をつかんだ



今日、こんなに良くしてくれた藤本くんを…
今日だけじゃない、今までもずっと
藤本くんに私は支えられてきた


そんな藤本くんをひとりにしたくなかった



藤本くんは
私の手をゆっくり離して


「こっちじゃないよ…」

私に、そう言った



「…ずっと待ってましたよ」

先生にそう言って
私に手を振って改札に向かった


藤本くんは振り返ることなく行ってしまった



私は藤本くんに感謝の気持ちで
いっぱいだった…



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