蒼くて、紅い… 甘くて、苦い…

➖藤本➖


今日
佐藤といれて、嬉しかった


待ち合わせの時からドキドキしてた

映画観てる時もドキドキしてた


私服でいつもと雰囲気違うから
なんか照れくさくて…

でも、やっぱりかわいくて…



クリスマスのせいかカップルが多くて
羨ましかった


でも実際、佐藤と付き合ったら
オレ、恥ずかしくて
あんなふうにできるのかな…
そんなことを考えながらカップルを見てた


考えるだけで緊張した



やっぱり、佐藤とは
この距離がいいのかも
そう、自分に言い聞かせた



佐藤になんかプレゼント買ってあげたかった

クリスマスプレゼントって
なんとなく言いたくなかった

それは付き合ってからにしたかった


いつものお礼
弁当の



手袋にした

いつも寒そうにしてるな…って
佐藤見てると思ってた


その手が繋げたら…


温かいのかな?
冷たいのかな?
って、いつも小さい手を見てた


触れたいな…って

好きだから、思う



もう少し一緒にいたくて
一緒にハンバーガー食べた

クリスマスのファーストフード店て
男同士の友達しかいないな


付き合ったら
雰囲気のいい店とか予約して…

そんな日が来るのかな…



佐藤は辛くないの?

そんなことを聞いてしまって
佐藤を困らせた



その顔を見ると
オレはいつも辛くなる



ごめんなさい…

謝られると虚しくなる



笑っててほしい



オレの掌に重なった佐藤の掌を
ゆっくり握った


華奢で力を込めたら折れそうな手


初めて、触れた…


ドキドキした


指先が冷たくて
でも温もりのある
優しい手だった…


爪に塗った
淡い赤色がかわいかった




そう呼んでみたい…


佐藤を離したくなかった




駅の人混みで

「紅」そう呼ぶ声が聞こえた


声の先は、きっと…


スーツの男性だった

山田から少し聞いたことがあった

佐藤の好きな人
年上の人らしいって



佐藤、よかったな…

今日、大好きな人に会えて

オレも今日、楽しかった



じゃあ、また、新学期…

行こうとしたオレの腕を
佐藤の手がつかんだ


さっきあげた手袋…



嬉しかったけど
佐藤、こっちじゃないよ…

せっかく好きな人に会えたのに…

オレなんかに気使わないで…

遠慮なんてしなくていいのに…



待ってましたよ

あなたをずっと…




佐藤、今、笑ってるといいな


オレは、電車の中から外を見て
佐藤の幸せを願った




< 197 / 318 >

この作品をシェア

pagetop