蒼くて、紅い… 甘くて、苦い…

➖瞬➖



「紅」

駅の人混みで紅をみつけた



声をかけた直後
紅がひとりじゃないことに気付いた


なんとなく見覚えがあった

あの時の…



オレに会釈して
行こうとした彼を紅が止めた


彼は紅の手をゆっくり離して


待ってましたよ…

オレにそう言って彼は去った



オレは紅と一緒に帰った



紅から彼の話はしなかった

オレからも聞かなかった


聞いても…仕方ない


お互い口数が少なかった



電車の中、紅の横顔を見て気付いた

いつかオレがあげた
お土産のピアスをしてた

まだしてくれてるんだ


紅、会うたびに、綺麗になる…




電車から降りて駅を出た


オレはイルミネーションの下
白い息を吐いた


紅は今日手袋をしてた



亮たちの結婚式の話をした

写真ができたから亮のアパートで見ようと言った


話しながらもオレは、気になってたんだと思う

さっきの彼のことが…


今日、楽しかった?

そんなことを聞いてしまった


楽しかった…

そう答えた紅の声が
震えてたのがなんとなくわかった


その直後
紅が涙を拭いた


胸が痛かった


言葉とは裏腹なその涙の意味が
オレには、わからない


楽しかったなら、涙なんていらない



いつもどおり紅を家まで送って
オレは、帰った



紅…

幸せなんだよね?



空に上がる白い息と一緒に
空を見上げた



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