逃げる彼女に甘い彼 ~my sweetheart~
「ええ、とっても。この色とかすごくきれい。」

「褒めてもらえて、嬉しいです。頑張って作った甲斐があります。」

「えっ、あなたがお作りになられたんですか?」

「陶芸作家の南です。普段は工房にこもって作品作りなんですけど、時々ここに立ってお客様の声を聞くんです。久しぶりに来て、あなたに褒めてもらえて嬉しいですね」

「いいですね。自分の手で物作りができるだなんて。」

「器は使って貰えて初めて役割を果たすので、食べ物を美味しく見せたり、花器なら花を如何にきれいに見せるか。なので使う人次第なんですがね。」

「ふふ、とても控えめなんですね。作家さんなら有名になりたいとかクセのある方が多いのかと思ってました。」

「中にはそういう人もいますけどね。私は器は作るけど中身はさっぱり。料理も出来ないし、花も生けれない。」

「こんな素敵な物がつくれる腕前があるなんて羨ましいです。
せっかくの素敵な器、私に譲ってくださいますか?
今日はこれから料理を作る予定なので、是非使いたいです。」

「もちろんです。」

「ふたつでもいいですか?」

「ええ。ありがとうございます。」


素敵なお店でお買い物出来たなぁ。蓮さんも気に入ってくれるかしら。
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