逃げる彼女に甘い彼 ~my sweetheart~

「やっぱりこの庭、気にいると思った。」
クスリと笑いながらいう彼に、さっきまでの尖った雰囲気はない。

「よく来るの？」

「昔、家族で来てた。何にもないから退屈だったけど、芽衣はこの庭気にいるかなって。」

日本庭園には所々に花が咲いていて。うん、素敵。

「芽衣と温泉来るの初めてだな。一泊しか出来ないけどゆっくりしていこう。」

「泊まるの？お仕事は？無理してるんじゃないの？」

「いいんだ。芽衣の方が大事…。とりあえず、温泉来たし入ろうか。」

「蓮さん…。」

彼は少し寂しそうで、私の無鉄砲な行動が彼を困らせているのかな。

それぞれ、温泉に入って、陶芸による筋肉痛が癒された。

好きな浴衣をと、きれいな紫色の浴衣をお借りして、久しぶりだなとくつろいだ。


夕食まで時間があって、部屋から庭を眺めながら少しだけお酒を嗜んだ。
春も近いのに、この辺りは気温が低いのか、庭の片隅にはまだ雪が残っている。

「温泉いいお湯だった。ありがとう、連れて来てくれて…。」

「イヤ、オレも仕事ばかりでゆっくり出来る。
なあ、芽衣。どうしてあんな山奥まで行った？オレはまた芽衣を傷つけてるのか？」

「そう思わせて、傷つけてるのは私だね…。大丈夫。信じられるから。」