逃げる彼女に甘い彼 ~my sweetheart~
「どういうこと?やっぱりオレへの不信感じゃないか。聞きたいことあれば聞けよ。
そんな我慢するなよ…。」
真っ直ぐな鋭い視線につかまった。

「ちっぽけなプライドくらいあるの、私も。 信じてるから大丈夫。
本当に、こんなふうに煩わせたくなかった…。それはごめんなさい。」
と目を伏せた。

「オレだって、信じてるつもりだよ。でもよく知らない男と山へ駆け落ちしたかもって思ったら、めちゃくちゃ苦しかった。
フランスへ行くの止められなくて、今度こそ芽衣がオレの所からすり抜けていくのかと思ったら堪らなかった。何より、気持ちが冷めて、あの人のことが好きなのかもって思ったら怖かった。
芽衣のことはオレが一番知ってたいんだよ。
喜びも悲しみも、苦しみも、なんでも。」

彼の苦しい表情が本当に心配してくれたんだと思った。

「蓮さん…。あなたも私で不安になるの…?私ばかりだって…。」

私に構ってるヒマなんてない筈だって、大きな社会があって、色んなものを背負ってるあなたは。

「はっ?何言ってるんだよ。不安だらけだよ。やっとの思いで付き合えて、彼氏になれて、なのに、仕事は前以上にむちゃくちゃ忙しくて…。
会えなくて発狂しそうだ!」

一気に言い放った彼が可笑しくなった。

クスっと思わず笑って、そんな彼が大好きだ思った。

「私は蓮さんでいっぱいいっぱいだよ。
それに南先生は愛妻家で家族を大事にする優しいパパでしょ。」

「分かんないだろ、そんなの…。それにあのチビも調子にのって、芽衣に夢中になってた。」

もう、可笑しくって、さっきまでの無言の空気が一変和やかになれた。

「で、芽衣はなんで山奥に籠もったの?」

ああ、白状するしかなさそうだ。
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