逃げる彼女に甘い彼 ~my sweetheart~
回顧 ー蓮sideー
芽衣との出会い。


あの頃のオレは大した目標もなく、親がいう学校へ通って、親が納得する成績をそこそこおさめて、
大学通って親の会社の決められた部署で働くんだと、希望や期待もなく適当にやり過ごしていた。
周りは就職活動でピリピリしていても、オレは呑気にコンパ行ったり、後輩なんかと遊びまわっていた。

それが当たり前で、特に家族が仲が悪いわけでもなく、兄や姉も親の会社で働いていたから特に疑問にも思わなかった。自ら苦労する必要もないし、お金も困っているわけでもない。

この日は会社の何十周年かのパーティーで、創業ファミリー一同が出席することで、当然のように
パーティーをやり過ごしていた。
パーティーはどこかの洋館を貸し切りガーデンパーティー。
内外で参加者は談笑している。


挨拶で愛想をふりまき、任務終了とばかりにパーティー会場のはずれで息抜きしようと抜け出した。

ベンチを見つけたオレはシャンパン片手にそこで休憩しようとしたら、すでに先約が。
ひとりの女性が、ひとりで座っていた。
白いワンピースにボレロを羽織り、長い髪をポニーテールにしている後ろ姿。
後ろからみても、明らかに自分よりは年下で子供の出席者かと思った。

近くに座るか、様子をうかがうと、独り言のように
「あーお腹減っちゃったなあ。お兄ちゃんどこ行ったんだろう…。」

その幼さが可愛くて、思わず笑ってしまった。
その笑い声に驚いて振り向いた彼女。
「だれ?」

これが芽衣との初めての出会いだった。
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